2005年8月に一ヶ月間、ボーイズホームで大変荒っぽい少年たちを相手に一生懸命ボランテイアを
してくださったM.W.さんのレポートです。
私がジャマイカを支援する会を通してJAMAICAN CHRISTIAN BOYS HOMEでボランティ
アをすることになったのは、学校の国際インターンシップで自分でボランティア団体
を見つけ、そこで体験してみるという授業の一環からでした。ジャマイカに滞在した
一か月間は忘れ難いものになりました。そして、ボランティアとは何か、人に貢献す
るとは何か、という問題に真剣に考えるようになったのもこの経験を通してからです。
CHRISTIAN
BOYS
HOMEの子供たちに始めて会った時は、その人懐っこさと、パワー
に圧倒されました。彼らは、日本の子供たちに比べればはるかにエネルギーに満ち溢
れ、目が輝いていたと思います。今の日本の教育では誤解されるであろう体罰なども
日常のことでしたが、たくましい子供たちは叩かれて大泣きした数分後には、舌をぺ
ロッを出して笑っているのでした。勿論、スタッフの皆も悪意で手を出している訳で
はなく、腕白な子供たちをコントロールするにはそれ以上のエネルギーがいるもので、
愛情から来ているというのは私から見ていてもわかりました。しかし、はじめこの光
景を見たときは本当に驚いてしまいました。スタッフから私に注意する事は、とにか
く子供たちを甘やかすな、ということでした。正直、始めのうちはこのスタッフのア
ドバイスを理解する事が出来ませんでした。子供たちは、愛情に飢えているのに、な
ぜこんなに厳しくするのか・・・。そんな思いを持っていたのですが、優しくしなが
ら教育することの難しさを徐々に理解してくるのでした。正直言いますと、甘くして
いたせいで子供たちには完全にナメられていたと思います(笑)そんなわけで子供た
ちは私のいう事はほとんど聞きませんでした。。。
ボランティアをするにあったっての困難さを痛切に感じたのは、やはり文化、ナショ
ナリズムの違いでした。ある日、世界陸上の中継をやっているテレビに、子供たちが
釘付けになっている時のことでした。あるジャマイカ人選手が、走っている途中で足
を怪我してしまい、走るのを途中でやめてしまいました。それを見ていた子供達の落
胆ぶりとそのリアクションを見て、私は思わず笑ってしまいました。すると、一人の
子供が「何がおかしいんだ!人の失敗を見てお前は笑うのか!」とまくし立ててきた
のです。その選手を笑ったつもりはありませんでしたが、確かに日本人として私がそ
のレースにそれ程関心を持っていなかったのも事実でした。この時、私はボランティ
アに来ているのであったら、もっと距離を縮めなければならないと反省し、翌日から
子供たちと一緒に必死でジャマイカ人選手を応援したのでした。すると、子供たちは
日本人選手がでてきたら、大喜びで応援してくれるようになりました。
また、こんなこともありました。子供たちがじゃれてくるのですが、汗と食べかす
まみれの顔で舐められたりして体中べとべとになったときのことです。しばらくして、
何気なく水道でべたべたになった顔を洗っていると、一人の子供が「モトイは僕たち
のことを汚いと思っているの?」と聞いてくるのでした。後ろでは「神経質だ!」と
か「俺たちを不潔だと思っているんだ!」と叫んでいる子供達もいました。子供たち
はストレートで、いつも自分達を本気で愛してくれているのかを見ているのだ、とそ
の時気付かされました。子供たちにごまかしは効かないのです。
別れの時は色々な意味で辛く考えさせるものでした。「モトイは僕達のこと愛して
いる、ジャマイカを愛していると言ってくれたのに、何で帰るんだ?」と言われた時
は、自分は偽善者なのかと苦しい思いをしました。帰る時が近づくと、あからさまに
話し掛けてくれなくなった子供もいました。(もちろん、別れを惜しんで一緒にいて
くれた子もいます)ただ、自分には帰るべき裕福な国があり、家族が待っていてくれ
るけれども、彼らはずっと貧しい国の孤児院にいなければならないのです。その壁は
想像以上に大きいものでした。裏切ったと思われても仕方ないと思いました。
滞在した1ヶ月間は本当に色々な思いが交錯して、思い悩む事も多かったです。ひょ
っとしたら、人の役に立とうなどという思いは奢った気持ちなのではないか、とすら
考えた時もありました。自分の無力さと孤独感から泣きながら帰った時もありました。
(その時あたってしまった物乞いの人ごめんなさい)喜んだり、怒ったり、悲しんだり、
ここまで感情が大きく揺れ動く毎日は、日本で平凡に暮らす私にはそんなにあること
ではありませんでした。
勿論、つらい事ばかりではなく、心から楽しめた瞬間もたくさんありました。JICA
のメンバーに飲みに連れて行ってもらったり、平松さんのお共としてWFWPの会議に参
加させていただいたりと、毎日がとても新鮮でした。
今回のボランティアでは、正直、私が何をしてあげたか、というより私が学んだ事、
教わった事の方が圧倒的に多かったと思います。私はもう日本にいますが、より時間
をかけてジャマイカの事を知って好きになったら、もっと同じ土俵の上に立って何か
してあげれたのではないか、などと今でも考えたりします。ボランティアで大切な事
は、長期的な援助と真剣にぶつかる心だったのではないかと思います。平松さんのよ
うに粘り強い長期的な援助をすることで、それは少しずつ実っていくのだと思います。
それは簡単なことではありませんが、ジャマイカを支援する会が今後もその困難を乗
り越え、ますます発展していく事を心より祈っています。